きもの風土記きもの風土記

現在の日本における物づくり事情は、経済成長がもたらした後遺症などを因として、主にはコストダウンのため、海外にその生産基地を移さざるを得ない状況にある。日本固有の繊維製品であるきものに関しても例外ではないのだが、これにはやっかいなことに、国内においての職人不足もプラスされる。
中国5千年の歴史が保有するシルク関連のあらゆる技術は、こんな日本事情を埋めて余りあると興味を抱いていた筆者に、彼の地で作られる和装製品に出会うチャンスを得、即機上の人となった。以下はその報告である。

   高盛刺繍
05年10月下旬、上海空港に降り立った筆者は、想像に絶する広大な地を一路蘇州へと向かう。左手に上海蟹でも有名な太湖を見ながら、車で3時間余の行程だ。目指すは蘇州市の高新區にある、韓錦途さんの工場。ここを根城に、中国でも養蚕が盛んな杭州にも訪れてみるつもりだ。が、まず新區で作られる和装製品の根本をなすと思われる高盛刺繍を紹介しよう。
盛上げ版 刺繍の芯 糸かぶせ
出来上がり 部品 製品

高盛刺繍、文字通り膨らみのある立体的な刺繍だ。その工程を簡単に説明しておこう。
まず1だが、布団などに使われていた古い綿を集め、図案に沿って綿を盛り上げ糸で括っていく。2は盛り上げ作業が終わったもので、刺繍の芯になるもの。それに刺繍糸をかぶせて(3・4)仕上げていく。5は龍とか虎とかの部品にあたるもの。6は偶然であったが、日本の学校からの注文品だ。