次に蔓が乾燥しないうちに木槌などでたたいて皮を剥ぎ、アラソ(中皮の繊維質部分)を剥ぎ取り十分に乾燥させる。大変力のいる仕事だが、と同時にその肌の色から素材の善し悪しを見極めなければならない。赤茶っぽいもので横じわが入っているものがベストらしいがなかなか出会わないという。
そして
『灰汁炊き』に移る。これは大麻や苧麻にはない工程だ。アラソを柔らかくするために木灰と少々の石灰を入れ約4時間炊きこまれる。とはいえ、この木灰が仕上がりを左右するため木を撰ばなければならない。ここではとりあえず針葉樹はだめだ、ということだけ付け加えておこう。炊きあがったアラソを寒の清水に晒し、コウバシでしごき不純物を取り除く。これを『藤こき』といい、しなやかで長い繊維だけが残される工程だ。
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アラソ 藤こき(実際は冬場に行われる) コウバシ

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こき終わったものは、繊維を柔らかくするため米ぬかを溶かした湯に浸す。これを『熨斗入れ』といい、その後竹ざおにかけて天日で乾燥(写真)させる。
総ての織物の工程にある撚りかけ、枠取り、整形などの説明はここでは省くが、その前に最も熟練を要する
『藤績み』という肯定がある。これは糸にする工程、糸紡ぎのことだが、まず、つくるものに応じて糸の太さを吟味しなければならない。そしてそれに応じて同じ太さに裂き、結び目をつくらないように績み、1本の糸に仕上げなければならない。帯1本に換算すると「3ヵ月はかかる」という大変な仕事だ。着尺ともなれば帯50本分の糸績み素材がいるという、なんとも気の遠くなるような話だ。
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藤績み 帯糸 着尺糸

 
   
年間3トンの蔓を採集しても糸になるのは約1割。しかも、製品の善し悪しは原木が総てを握っており、工程での修正は殆ど不可能という藤布。しかし、日本にしかない藤蔓の織物は、着尺から帯草履からインテリアと、今風にアレンジされ、その製品の種類は多岐にわたっている。
植物が故に自然の暖かさを秘めた藤布、そして古くはは万葉集に詠まれた古代布。それは上世屋から外へと、その育地こそ移ったが、心ある人々の手によって先人の技を引き継ぎ21世紀を力強く歩み始めている。
 
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