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  消費者に対しては、知識や経験不足に乗じて高い価格を提示して売る「高売り」や、根拠のない価格を提示した後「値引きした」「問屋価格」などと安いという印象を与えて購入を誘引する景品表示法に触れかねない「値引き販売」、消費者を長時間拘束するなどして強引に売りつける「圧迫販売」などが行われていたという批判もあった。不透明な価格、不十分な表示、不適切な販売方法などの排除が大きな課題として挙がっていた。
こうした旧態依然とした商慣行については常軌を逸し、このことが消費者の不信感を招き着物離れの一因になっているとの指摘もあった。
2000年には京都和装産業振興財団が、「近代的な商取引の確立と経営基盤の安定を通して和装振興を図り、消費者の信頼回復を目指す」として「商取引の改革に関する宣言」を出した。優越的立場からの商取引の排除と、消費者指向の配慮、商取引の文書化や契約履行を順守することを柱にした。支払期間や手形サイトの短縮、加工代金の現金払い、歩引きの撤廃などもうたっていた。これを受けて03年には「取引基本契約書モデル」も示したが、「取引のケース・バイ・ケースで古い商慣習が残り、商取引の改革はそれほど進まなかった」という。
一方で、経産省が15年に行ったアンケートでは、20代の女性の73%、30代の女性の66%が今後着物を着たいと回答、20~40代の女性に着物を着てみたいシーンを聞いたところ冠婚葬祭が77%と最も多かったのに続きドレスコードが特にないパーティーやイベントが25%、デートや女子会など自分磨きのファッションとしてが23%あり、若い世代が着物に興味を持ち、潜在需要は少なくないことが分かった。
また、京都和装産業振興財団、日本きもの連盟など業界団体や京都府、茨城県結城市など関係自治体は、「きもの文化」を東京五輪・パラリンピックが開かれる20年にユネスコの世界無形文化遺産登録を目指した運動を続けている。
着物は茶道や華道、日本舞踊など日本独自の文化とともに発展し、近年の国際化、グローバル化で着物の良さが見直されている。訪日外国人旅行者がレンタルにより着物姿で観光を楽しむ光景も増えて、国際的に通用する衣装として認知されており、日本文化の魅力を発信するまたとない機会である、などとして5月末には10団体が文化庁長官や経産相らに要望書を提出している。着物は外国人からも人気が高く、今後インバウンドを含めた海外需要の可能性も期待されている。
そこで経産省は15年11月、文化人や学識経験者らで構成する和装振興協議会(座長・近藤尚子文化学園大教授)を立ち上げ、「和装の持続的発展のための商慣行のあり方について」を検討してきた。同協議会は、和装の持続的発展のためには消費者との継続的な信頼関係の構築が不可欠で、消費者本位の商品やサービスを提供することで和装市場が活性化し、業界全体が発展していく好循環が生まれることが重要として指針を策定した。
指針は業者間の取引に関する8項目と、業者と消費者間の取引に関する9項目の計17項目で構成されている。
業者間取引では、まず商慣行の原則として、取引上優位な立場の側が取引先に不利な条件を押し付けるのではなく製造から販売までのサプライチェーン全体で適正な利益の配分とコストとリスクの分担に取り組むよう求めた。独占禁止法や下請け法などを順守することはもちろん、下請け法の対象にならない取引についても同様に取り組むべき、とした。
さらに、全取引で契約書、発注書など書面化の義務付け▽現金払いに努め、手形支払いの場合の期間は90日以内にして将来的には60日以内を目指す▽手形の現金化コストを受注者に負担させることのないよう取引先との十分な協議▽歩引き取引や延べ払いの廃止▽受注者に不当なコストの一方的な押し付けの禁止--などを明示した。
消費者との取引では、消費者本位の商品、サービスの提供をあげ、単にモノとしての着物などを売るのではなく、着用シーン・スタイルの提案、メンテナンスのフォローなどによって付加価値の高い商品・サービスを提供することが重要だとした。また、目先の売り上げや利益の拡大を追って無理に高額商品を売ることは、結局は消費者の不信感や「着物離れ」につながることになると注意し、消費者にふさわしい商品を提供すべき、とした。
その上で、消費者に分かりやすい説明と、産地や仕立地、組成(絹、綿、ポリエステルなど)、製法(手描き染め、型染め、インクジェットなど)、事業者の連絡先などの表示を求めた。さらに、「高売り」「値引き販売」「圧迫販売」などを禁止し、反物を中心とした価格表示では、仕立て代、小物などを含め消費者のニーズに応じた最終的な負担額を分かりやすく説明することとした。
同協議会は、それぞれの事業者が指針の趣旨・精神を理解して、示されたような商慣行を実践していくことを強く期待しているとし、今後、和装業界の取り組み状況についてのフォローアップも行っていくという。戻る
 
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