きもの風土記きもの風土記
家蚕と野蚕
世界最大の絹消費国日本。そんな日本への絹は中国が原産地とされているが、インドのアッサム地方が原産地ではなかったかとの説もある。そのことは後にゆずるとして、5千年の歴史を経て少しでも上質の糸をと人工的に淘汰改良されてきたのが家蚕である。が、もともと蚕は、栗や桑の原木などの葉を食べて繭を作る自然棲息、つまり野蚕であった。
現在でも、野蚕として活躍している代表的なものに、中国の柞蚕やエリサン、インドのサールサン、ムガサン、サクサンなどがあり、日本でも天蚕はよく知られているところだ。また、アフリカでは、アナフェ、ゴノメタなどの繭からあまり知られてはいないが、野蚕織物がある他世界には熱帯、温帯を中心にシルクとして利用できそうな野蚕が20種類以上は生息しており確かめたわけではないが中にはラグビーボール大の繭もあるという。
家蚕の繭は大半が白であるのに対し、野蚕
外的から身を護るため保護色を余儀なくされる。そのため殆どが茶褐色だ。そして野蚕の吐糸や繭作りは、家蚕のように均質な繭層を作らずその糸は太い。というのも繭糸構造に特徴があり1本の糸の断面には数百本以上の細管があり、他の繊維では真似のできない繊維特性をもっている。これを活かすのは大変興味のあるところだ。なかにはゴールデンシルクと呼ばれるインドのムガサンや、日本の天蚕の淡緑、家蚕でもカンボージュの黄金の糸など、その異色ゆえに一定の評価を得ているものもある。が、それとは明らかに異なった金箔そのものの光沢を放つ繭が、中部ジャワに存在する。それはまさに黄金の繭と呼ぶにふさわしい。しかしこの地では、この虫を火種として重宝している。燃えつきが非常に良いためだ。糸に興味を抱く人であれば「何かに使えないか」と思うのが普通であろう。現地で何らかの発想がわかなかったのは、不思議なことだと考えるのは筆者だけであろうか。
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ムガサンの繭と糸  葉についた黄金の繭

クリキュラとは
黄金の繭を作り出す虫は学 名クリキュラ・トリフェネストラータといい、ヤママユ蛾科に属し中部ジャワを中心に棲息している。そのためか観光地で見かけたことがあるという人に出会うが、おそらく失落した繭であろう。実際には野生の木ドンドンを好み繭をつけるが、ドンドンの木は散在しているため見つけだすのは容易ではない。また10

↓bにも成長するので繭を採取するにも危険が伴う。そういったことからも大変貴重な素材であることがうかがえる。↑
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クリキュラの成虫

↓その他アボガドやマンゴスチン、いわゆる果樹を中心に寄生するクリキュラの幼虫も熟蚕期になると例にもれず繭をつくりはじめる。その特徴は黄金色の糸を吐くことは勿論繭が相互に付着し10〜20個の固まりを形成することだ。
ただし、家蚕にある玉繭ではなく繭同志が接着した上での繭集団だ。