疲弊する産地に対し様々な意見が飛び交うなか、養蚕農家や製糸業の再生・発展に向けた新プログラムがスタートを切った。農林水産省の「蚕糸・絹業提携支援緊急対策」で、養蚕、製糸、織物、染色加工、織物問屋、小売りの「提携グループ」による優れた国産絹製品の確立が主たる目的だ。
これまで作家名などを冠に製品をブランド化し、販促手段として使用してきているが、「蚕糸・絹業提携支援センター」が発足したのをきっかけに、生糸そのものに、繭そのものに、特徴を持たせてブランド化していく取り組みが活発化してきた。まさに次世代のきものか。そのいくつかを紹介しよう。

  
群馬県産ブランド繭 世界絹遺産
きもの風土記
日本蚕糸絹業開発協同組合は、経糸にブランド生糸「ぐんま200」と緯糸に新蚕品種「上州絹星」を使い、丹後の機屋で製織した紋意匠白生地「世界絹遺産」を発表している。
同組合は3年前に設立され、絹小沢(群馬県)を中心に製糸業、機屋、染工場など13社で構成、群馬県産ブランド繭と生糸の白生地、裏絹製造・販売の持続的な発展を目指した商品開発と振興活動を行なっている。
絹小沢は「世紀21」や「ぐんま200」「新小石丸」など、純国産生糸を100%使用した裏絹を中心に手掛けているが、ここ数年、業界が原産地証明をきちんと明示する動きを見せるなかで、同社のブランド商品に対する注目度を上げている。
新商品の「世界絹遺産」は、地元の碓氷製糸農業協同組合が生糸にし、丹後の機屋ワタマサが製織している。染色性、防シワ性に優れているのを特徴としている。商品名は、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が07年、世界遺産暫定登録されたことを記念してネーミングされている。

  
糸からこだわる プラチナボーイ
きもの専門店の銀座もとじ(東京)は、オスだけの蚕品種「プラチナボーイ」の繭から作ったきものをオリジナルで展開する。産地の作り手にスポットを当てた商品を取り扱う同社は、「糸からのこだわり」をモットーに意欲的なものづくりを進めている。
「プラチナボーイ」は、大日本蚕糸会・蚕業技術研究所の大沼昭夫博士が37年間研究し、2002年に開発に成功した新蚕品種。オスの蚕はメスの蚕に比べて生産効率がよく、オスの蚕が吐く糸は細く長く、繊度も柔らかく光沢があり「丈夫で高品質」としている。
「農家の方が育てられた蚕が反物という形になったわけですが、そういう反物を見るのは初めてと言われました。今まで見たことがなかったそうです。実際商品を見ていただくことによって、今後いい蚕をつくるにはどうすればいいのか、そういう話もできました。農家の方々が元気になっていただくことが大事だと思います」と泉二弘明社長。

  
京都産繭を復興 グループ167
織道楽塩野屋(京都)は、京都府福知山の養蚕農家と長野県・岡谷の製糸所をグループ化し、「グループ167」として提携システムを確立。「一物全体」「身土不二」「トレーサビリティー」を基本に、“和のエコロジー”を追求している。「一物全体」は、蚕の命をいただいているということを消費者に伝えながら、絹の素晴らしさを啓蒙していく、「身土不二」は、京都産繭の復興と国産の絹織物づくりを目指すという意味。「トレーサビリティー」は、出所の表示と品質保証が追跡できる、顔の見える関係の中でものをつくる。
「本シボ柳条縮緬」の製造工程見学や養蚕見学ツアーなどを実施しているが、オリジナル商品に関しては、タオル、コーヒー用フィルター、服、小物など
絹織物全般をつくっている。同グループは基本的に絹という繊維の持つ特徴を生かすことをポイントに製品化を進めており、繊維以外では化粧水、桑の葉茶などもつくっている。