筑後地区の伝統産業、久留米絣(がすり)の織元が集まる広川町で、開発から年月が経過した「織機」や、独特のかすれた柄を出すための防染用「くくり機」のメンテナンス(維持)の問題が浮上している。部品交換が必要なのだが旧式で既にメーカーも製造をしていないからだ。絣組合は久留米工業大(久留米市)に部品製造を依頼、11月下旬から部品の鋳造が始まった。学生や教員たちが若い力と大学の技術で地域の伝統を守ろうと奮闘している。

  100年前の織機が現役・・ 部品製造を久工大に依頼
3Dプリンターで再現した鋳枠(左)

久留米絣は、素朴な柄と、肌になじむさらりとした風合いが特徴。着物やもんぺに多く使用され、1957年には国の重要無形文化財に指定されている。
久留米絣広川町協同組合によると、町内には10以上の工房があり、うち半数が大量生産できる自動織機を使用。トヨタグループ創業者の豊田佐吉が約100年前に開発した「Y式織機」が現役で稼働しているが、一部の部品が古くなり、交換の必要性が出ている。
織機メーカーは既に該当部品を製造しておらず、かつて代替品を供給していた近隣の鋳造所も廃業。他の鋳造所では少量の注文は受けてくれず、現在は不要になった織機から補充する状態が続いている。
「新たな織機を導入する(金銭的な)余裕もないし、古い機械だからこそ出る風合いもある」と組合の冨久公博代表理事。そこで、昨年8月に町と久留米工大が連携協定を結んだことをきっかけに、組合は同大に部品製造を依頼した。
大学はまず、金属加工技術や3Dプリンターを使って、くくり機の鉄製の小さなねじを作ったほか、糸を巻く木製の部品をプラスチック樹脂で試作。強度などの改良作業を続けている。
組合が最も熱望するのが、織機のモーターの回転を機械に伝える「ロッド」(長さ30a、幅3a、厚み2a)と呼ばれる棒状で鋳物の部品。大学は別の金属加工なども検討したが、硬さが同程度でないと別の部品を損傷する恐れもあることから、同じ鋳造技術で製作することにした。


  部品製造に3Dプリンター
 鋳枠製作
くくり機の糸を巻く部品
大学には設備がないため、近隣で交流のある鳥栖工業高(佐賀県鳥栖市)に協力を求めた。同校には実習で使用する溶解炉があり、11月下旬から学生と教員が出向き、作業に着手。組合から借り受けたロッドを参考にさびや摩耗を考慮し3Dプリンターで、鋳型のもとになる「鋳枠」を製作した。
12月7日には学生らが中央で二つに割ったこの枠を砂に埋め込み、溶かした鋳鉄を流し込む型づくりを行った。8日に高校生の実習と合わせ、1500度に熱した鋳鉄を型に流し込む作業を実施し、3台分が完成したという。
指導した鳥栖工業高の森祐二教諭は「鋳造は物づくりの基本となる技術。3Dプリンターという新しい技術も加わって社会に貢献できることは喜ばしい」と語った。
同大によると、近く大学内に織機を持ち込み、鋳造した部品を装着して耐久試験などを行う予定という。同大機械システム工学科3年の内木場凌太さん(21)は「部品製造に携わることで、鋳造を初めて経験することができた。これからも絣の製造現場の期待に応えていきたい」と意気込んでいる。