「『老舗』は『師似せ』」という言葉がある。先生のまねをして同じものを作り、同じように売りなさい、という意味だ。だが、着物離れが定着した今の時代、それだけでは廃れてしまう。
京都は皇族や公家が住んでいた明治維新まで、国内のファッションの先進地だった。江戸中期に生まれた京友禅は、その代表格だ。都が育んだブランド力は今も息づいている。
「京都で着物を買いたい」と全国から訪れるお客さんも少なくないが、職人たちの技術はしっかりと継承した上で、時代を見据えた戦略が欠かせない。伝統とは守るのでなく、創り出すものだ・・。と話すのは京友禅「千總」の会長西村總左衛門さん。

   京友禅の意匠力を生かそう
 例えばサーフボードに
「千總」会長の西村さん
来年で創業460年の歴史は危機の連続だった。明治維新で顧客が京都を離れた時は、日本画家に下絵を依頼し、デザインを刷新した。戦時中はぜいたく品として販売が禁止されたが、職人に賃金を払って生産を続け、技術の断絶を防いだ。
近年の挑戦はきもの以外の分野への進出だ。バブル崩壊がきもの離れに追い打ちをかけ、業界全体の生産量は1970年頃のピーク時の半分に落ち込んだ。顧客の裾野を広げるには、みやびやかな色彩と文様を駆使した京友禅の意匠力を生かさない手はない。
サーフボードに友禅で染めた絹をコーティングして「和」を表現したり、有名デザイナーと組み、表裏で柄が違う洋服の生地を染めて海外に出品したり。陶器、小物なども幅広く手がけてきた。
伝統産業の集積地にも活気が必要だ。本社では、1階を改装してお茶をテーマにしたカフェをテナントに入れ、呉服屋が集まる周辺のにぎわいに一役買っている。
伝統産業の集積地にも活気が必要だ。本社では、1階を改装してお茶をテーマにしたカフェをテナントに入れ、呉服屋が集まる周辺のにぎわいに一役買っている。
「ジャポニスム」の言葉に象徴されるように、古くから海外には日本文化へのあこがれがある。外国人観光客が増える今、世界発信の好機だ。知恵を絞ってきものの良さを伝えることで、和のファッションもグローバル時代にふさわしい輝きを増すと思う。
◇にしむら・そうざえもん 関西大工学部卒。1985年、京友禅の老舗「千總ちそう」社長に就任。98年に父親の後を継ぎ、15代總左衛門を襲名した。2011年から現職。72歳。