きもの風土記
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天蚕糸と真綿(紬)
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飼育林


天蚕(てんさん)・・。ヤママユガとも呼ばれ鱗翅目(りんしもく)天蚕蛾科に属する日本原産の野生絹糸虫である。その幼虫はギョッとするほど大きな青虫であり、成虫になり翅(はね)を開けば15〜18aはある大型のものだ。しかし、この虫が作る繭は実に美しい薄緑色をしており、ここに繊維のダイヤモンドと呼ばれる所以がある。
自然の山野で、クヌギやナラの葉をエサにして生息している天蚕は、年1回発生する一化性で、5月ごろ卵からかえる。幼虫は四眠五齢の発育経過をたどり、蚕でいるのは平均52日間。7月頃から繭を作ってさなぎになり、成虫になった蛾は、早いものでは8月ごろに産卵し斃死する。産卵される卵の数は1成虫あたり130〜200粒で、家蚕の520粒と比べるとかなり少ない。その分、卵は大きく幼虫も5齢で7〜8a、繭も家蚕のそれより二回りも大きい。
この繭から採れる糸が天蚕糸だが家蚕に比べかなり太く、1粒あたりの繭から採れる糸は、長さも量も少ない。その上先述したように一化性であるため生産量の限られた貴重な糸といえよう。
天蚕は外形に似ず非常にデリケートで、病害虫に弱く鳥などの天敵も多いが、ここで野蚕(天蚕)と家蚕の違いを付加しおこう。
最も大きな違いは、家蚕は桑葉の上をはいながらエサとなる葉を噛むが野蚕は葉にぶら下がって葉を噛む。しかも自然を好むため例え人工植樹であっても屋外に限られる。また、木から木に移る時は地面をはって移動する。この時が1番病気にかかりやすいという。
人工飼育には多大な根気と忍耐が必要だが、そのことも2、3加えておくと・・。
幼虫のころには、人が手で触れただけで黒い体液を出して死んでしまうため、木から木へ移すときには付着している木の枝を折って対処しなければならない。また、天敵のひとつであるアリを防ぐための薬にも非常に弱いし、エサとなるクヌギの木を植える土地も吟味しなければならない。何故ならば窒素分を多く含んだ葉を食べた幼虫は、病気にかかりやすいという。
これまで穂高町では、アリやカラスなどの天敵、そして雨などから天蚕を守るために、クヌギ畑の木をネットで覆ったり、土質条件が適合する土地へのクヌギの植林など、繭1粒あたりの収穫量をアップさせるため技術研究を続けてきたが、「さらに」を求めて現在も町を挙げて取り組んでいる。