綸子のように柔らかく、紬でないつむぎと称賛される牛首紬の秘密を探るべく、加藤機業場を訪ねた。「昔は焼畑の跡に山桑を植え、その葉をしごき桑を育てた。唯一の収入源である繭を出荷した後の屑繭で自家用の紬を織った。今でこそ繭を買うが、その他は昔となにも変わっとらんよ」と笑顔で話す。牛首紬の工程は撰繭から始まるのだが「1割は腐繭で糸にはならん」と続ける。ここでは牛首紬の生命ともいえる「のべひき」、いわゆる製糸についてふれておこう。
一種独特の臭いのする製糸場では4人の女性が煮繭から糸を引いている。石川県の無形文化財に指定されているこの技は、大変な熟練を要するという。80度の湯の入った繰糸釜に入れられた経糸用中繭80〜90個、緯糸用玉繭
70〜80個、それぞれの繭から引き出す細い糸を1本に合わせ筋コキに通し、少し撚りをかけのべ枠に巻きとっていく。
きもの風土記 い声をまじえながら。
現在、牛首紬を除いて、撰繭から製品までを工程とする紬織物はない。特に経糸も緯糸も共に
優れた紬を織るにはムラのない糸を紡がなければならないが、感と熟練が総てという。
「織物の基礎なので非常に神経を使うっちゃ。毎日が1年生と思うとるがや。やはり糸の太、細が一番気になる」、とこの道20年のベテランは、話す。楽し気な笑↑
座繰りすることで、空気の入ったパーマネント状のうねりを持つ自然糸、すなわち、機械で作る糸にはない強力なしかも生きた糸となるのだ。この座繰りへの執着こそが牛首紬の奥義ととらえた。また、釘に引っかけても破れず、釘が抜けてしまうほどの丈夫さから、別名釘抜き紬とも呼ばれている。
以上は、白生地としての紬であるが、もう一つの工房、西山産業では先染めの牛首紬も生産されている。
きもの風土記
機にかかった糸
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玉繭からの緯糸
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左玉繭・右中繭

きもの風土記

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