「夏も近づく八十八夜」という茶摘み歌がある。曲、詩とも不詳のようだが、八十八夜とは立春から数えて88日目のことであり、昔から春から夏へとうつる節目の日で縁起がいいとされている。縁起のいいことからも、茶摘みやもみまきなどの農作業の目安ともされてきた。
特にこの時期に摘み取られた新芽で作ったお茶は新茶と呼ばれ、特有の若々しい香りとすがすがしい味わいが珍重されている。茶摘み最盛期となる八十八夜、少しお茶にこだわってみようかなと思うのだが、薀蓄を傾けるほどの知識は無い。季節に押されて手をあげてしまったが、道具や入れ方にもと思ったが手に余る。今回は茶葉の話だけを取材してみた。選んだ茶葉は、日常使うもの8種類だが、絵面のデザイン上耳慣れない山茶を取り上げて9種類とした。

  山茶以外は
 飲んだことあるでしょう?
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煎茶 せんちゃ
最もポピュラーな日本茶。生産量も、全体の約8割を占める。摘み取った茶葉を蒸し、揉む工程を経て、針状の形に乾燥させて作られるが、蒸すという点でほぼ生産も消費も日本に限られている。。渋みのなかにほんのり甘みが残る味わいが特徴。緑がかった透き通るような黄色が、質の良い茶葉の証。
深蒸し茶 ふかむしちゃ
作る過程での蒸し時間を、煎茶より2〜3倍長くしているため、湯に溶け出しやすい煎茶となる。深緑色で味わいもコクがある。ほかのお茶に比べて歴史は浅く、昭和30年代に静岡は菊川市のお茶農家で生み出されたものらしい。短い抽出時間で濃く入れられるため、手軽な日常茶として定着している。
茎茶 くきちゃ
煎茶の仕上げ段階で、省かれた茎や葉脈から作られたもので、棒茶ともいう。玉露からできる茎は「雁ヶ音(かりがね)」「白折(しらおれ)」とも呼ばれ高級茎茶となる。香りも味わいもさっぱりとしたクリーミーな飲み口が特徴だというのだが、う〜ん、はたして知らず知らずの間に飲んだことあるのかなぁ。

きもの風土記
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山茶 やまちゃ
標高の高い山間部で作られる煎茶。標高の高さに土壌・日照・風量などのの条件が重なると、香りも味も力強い茶葉ができ上がるという。静岡県は安倍川上流域の標高200〜300bの地で、熱意ある生産者が数10年の年月をかけて作り上げた渾身の茶葉が有名で、その味わいは最高級との呼び声が高い。
玉露 ぎょくろ
新芽を摘み取る20日くらい前から、葦簾(よしず)などで茶木を覆い、直射日光を遮って栽培する。こうすることで旨み成分であるテアニンが増えるため、玉露特有のとろりとした甘みが生まれる。無農薬で手間隙かけて作られた宇治玉露は、一切の重みを感じさせない、すっきりとした口当たりが頬をゆるめる。
焙じ茶 ほうじちゃ
緑茶を200℃近い高温で焙煎し、一気に冷まして作る焙じ茶は、タンニンやカフェインが少なく、苦みが殆どないので飲みやすさがあり、アロマ効果も望める香ばしさが魅力。一番茶の質のよい茎を、特殊な装置で短時間焙じたものは奥深い香りを堪能できるが、番茶などと同位に置かれ高級なものではない。

きもの風土記
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玄米茶 げんまいちゃ
昭和初期に京都で生み出されたもので、強火で加熱した煎茶もしくは番茶に、炒った玄米や“ハナ”というポップコーン状にした玄米と混ぜるのだが、割合は店によって異なる。煎茶に香りをつけるという意味で、海外ではフレーパー・ティー(紅茶など香料で香りをつけたお茶)に分けられる。香ばしさが何よりの魅力。よく飲みました。
釜炒り茶 かまいりちゃ
生葉を蒸す日本茶に対し、生葉を釜で炒る製法で作られるお茶。この釜炒り製法は300年ほど前に中国から伝来。蒸す緑茶よりも、“釜香”と呼ばれる香気が強く、味はさっぱりとしていてのど越しがよい。香りを重視して無農薬の二番茶を炒る台湾式のものもある。日本では主に九州の佐賀、熊本、宮崎の各県で背産されている。
番茶 ばんちゃ
二番茶以降に摘まれた葉や、一番茶の煎茶から省かれる大きくなりすぎた葉などで作られる、下級煎茶のこと。煎茶にくらべ、甘みやコクは少ないものの、クセのないすっきりとした味わいと手ごろな価格で気兼ねなく飲める庶民派感覚のお茶。特に京番茶は、茶葉そのものが美味。子供の頃に飲んだ井戸で冷やされた大ヤカンが懐かしい。

  お茶っ葉
 エピローグ
おいしい茶葉を作るのには何が必要なのだろう。肥沃な土壌なのか、日照や風量などの自然なのか。もちろんすべてなのだろうが、そこに加わる人の手、すなわち手技こそがおいしいお茶の原点ではと思う。土壌作りや茶木の剪定、揉みや炒り。これらを見ていると、やはりこれは伝統工芸品だと思う。
日ごろ親しんでいる茶葉に、入れ方や道具の知識をプラスすれば、いつもと違った味を楽しめること間違いなし。お試しあれ。