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お正月と成人式

=主人と一緒に上司のお宅にお年始に伺います。どんなきものを着ていったらいいでしょうか。
=上司のお宅へ年始に伺うのですから、くだけた装いはいけません。かといって、あまりに改まりすぎた装いでも先方がとまどってしまうでしょう。新春にふさわしい柄の小紋に、1つ紋の縫取りの絵羽織を着るか、1つ紋付の色無地に袋帯を締め、帯の結び方を多少新春らしいお太鼓系の変わり結びにでもすれば良いでしょう。
訪問着や付下げでも良いのですが、お招きを受けた場合と違って年始の挨拶だけであれば、あまりに仰々しい装いはかえって失礼になります。脱いだ後の草履が汚れていないように、手入れの行き届いた草履を履いて行きましょう。替え足袋か足カバーをお忘れなく。

=結婚して初めてのお正月に、仲人さんのお宅に新年のご挨拶に行きます。振袖を着て行ってはいけないでしょうか。新婚3ヶ月です。
=新婚ほやほやの新妻が初めて迎える新春は、希望と幸せに満ちた輝かしい新春でしょう。匂うばかりの初々しさと、娘時代には無かった落ち着きと上品さがほしいものです。友達同士の新年会などとは違って、きちんとした新妻らしい姿でお伺いしたいものです。訪問着か付下の方が仲人さんも安心するでしょう。
今では結婚後1年くらいは中振袖を着てパーティなどに出席する方もあるようですが、外国などと違って日本で、しかも仲人さんへのご挨拶ですから新妻らしいマナーを心得た上で、きちんとしないと心配されます。

=この頃お正月の晴れ着の上にコートを着ないでショールだけの人が多いように思いますが、中振袖にはコートを必ず着なくてはいけないものなのでしょうか。
=本来コートは防寒用のものですから、外出にはコートを着るのが本当です。特に、中振袖、訪問着、留袖など礼正装には、きものをいためたり汚したりしないためにも用いたほうが良いのです。この頃の若い人の間では、中振袖にコートを用いずにショールだけの人が多くなりました。これにはいろいろな理由があって、必然的に1種の流行のようになってしまったのかもしれません。
例えば、シルエットが美しくないとか、冬の温度が高くなって寒さをあまり感じないとかの理由をあげることができるのでは。
中振袖は、洋服でいえばイブニングドレスと同じもの、イブニングドレスのままで街を歩いているのはおかしいという人もいます。が、洋服と和服とでは発想が全く違うので、同じように考えなくても良いのではないかと思います。
きものの歴史の中でも、女性がコートを用いるようになるのはそう遠い昔のことではありません。江戸時代の浮世絵などを見ても、物見遊山などにも、防寒には重ね着という方法を用いています。貴族などの打ち掛けの壷は別としても、ほとんどが帯つきです。
そのように考えると、現代の中振袖の帯つきも、それほどマナー違反とも思えません。ましてお正月は、街全体が松飾などをして装っています。若い人の中振袖の華やかさは、その街の風情に花を添えてくれると思います。寒くさえなければ、若い人はお正月くらいはいいのではないでしょうか。ただし、中年以上の方はなんとなく寒々しくみえますのでコートを着たほうがよろしいのでは。

=お正月に主人にもきものを着せて出かけたいのですが、ウールのアンサンブルしかもっておりません。帯は兵児帯ですが、おかしくないでしょうか。また、私は訪問着を着ようと思っております。
=出かける場所にもよりますが、お正月だからといってウールのアンサンブルでもおかしいということはありません。ただし、奥方が訪問着というのはおかしい。夫婦で出かける場合にはつりあいというのが大切です。
最近お正月にペアーなどで、女性が中振袖、男性がウールのアンサンブル姿を見かけます。男性がきものを着るようになったことは喜ばしいことですが、不釣り合いなのはおかしなものです。外国などでは、特にヨーロッパでは女性が正装している場合には、男性も正装しています。ご主人がウールなら、奥方も訪問着は諦めて、紬ぐらいにしてはいかが。
おせっかいながら、ショッピングか近所に出かけるぐらいならいいのですが、ウールでも角帯の方がしゃんとします。兵児帯は原則くつろぎです。

=お正月に主人にもきものを作ってあげたいと思いますが、どんなものが良いでしょうか。
=男性のきものも凝ったらきりがありませんが、一般的には紬の無地の揃いがなにかと便利です。気の張らないお出かけや、お客様の接待にはきものと羽織だけでいいし、改まった席や目上の方へのご挨拶などには、袴をつければ略装として礼を欠きません。
きものと羽織は対か濃淡にしておくといいでしょう。ただし、濃淡のほうがシャレ感があります。帯は、博多献上か七子(ななこ)織の角帯がビシッときまります。袴は紬があれば最適ですが、なければ仙台平か五泉平でも袴が少し勝ちますが場所によっては良いでしょう。

=お正月に主人がもきものを着ますが、履き物は何を履かせたらいいでしょうか。雪駄(草履)ですか、下駄ですか。また、足袋は白で良いでしょうか。
=履き物はきものとのバランスです。きものが改まった場合は雪駄で、畳表の絹天の鼻緒がもっとも正式とされています。紋付羽織袴を用いる場合には当然のことながら雪駄です。紬の場合には下駄でもいいが、正目の通った上等なものならよりおしゃれです。袴をつけた場合は雪駄です。下駄と雪駄の大まかな分け方は、角帯には雪駄、兵児帯には下駄と考えれば大体の目安になります。
男性の草履にもいろいろの種類があって、革の無地やトカゲなどの趣味っぽいものもありますがこれもTPOです。ヤボったくならないように。
足袋は正式には綿の白足袋を用いますが、その他の外出には木綿の紺足袋か朱子足袋などを用いてもかまいません。これは好みで普段履きに白足袋を用いる人もいます。

=お正月に羽織を着てよそ様のお宅を訪問してはいけないのでしょうか。
=お正月だからといって羽織を着てはいけないということはない。ただ、羽織の発生を考えると、女性が用いる場合には防寒とおしゃれ用に用いられたので、正式な形としては、女性は羽織を着ないのが本当でしょう。が、後になって無地の紋付や絵羽織などを重ね着の意味で用いるようになりました。きものが正式でない場合には、黒紋付の無地羽織を着て略装とし、格を出すことを考えたのです。また、少数の無地のきものに絵羽織を用いて華やかさを加えたりもしました。
このように紋付のようにきものをカバーするためのものは別として、きものが正式であれば羽織は用いないのが常識です。よそのお宅を訪問する場合、改まった訪問なら羽織は脱ぎます。きものが改まったものではないときだけ、それよりも格の上の紋付の羽織か絵羽の紋付などを、お正月なら用いると良いでしょう。
男性の場合は、羽織はスーツと考えてください。

=初釜に出席するときの装いは、男性も女性もどんな風にしたら良いのでしょう。
=初釜は、普通のお茶会と違いますから、最も正式でお正月らしい雰囲気の中で行われます。少々華やかになっても良いでしょう。ただし、華やかだけでなく格式のある装いをすることが大切です。
男性は、染め抜きの紋付のきものに仙台平の縞袴をつけます。袴をつけた場合には羽織は用いません。また、袴をつけない場合には、紋付のきものに角帯の着流し、それに十徳という紗織の茶羽織風のものを用います。
女性は、最も正式なものは色留袖ですが、訪問着か付下げの場合には格のある模様に縫紋を1つ付けたものが良いでしょう。色無地の紋付でも良いのですが、初釜には少し寂しいような気がします。ミスの場合には、近頃は中振袖を用いていますが、袖が長いので扱いに充分注意することが大切でしょう。

=会社の新年の仕事始めに、きものを着て行きたいのですが、どんなものを着たら良いでしょうか。
会社によってしきたりも異なりますから一概にはいえませんが、仕事始めのあり方にもよります。会社によっては、その日から平日と変わらずに仕事をするところもあり、顔合わせと挨拶程度で解散というところもありましょう。
その日は仕事をしなくてもいい職場であれば、中振袖や訪問着の華やかなムードを作るのも、お正月ならではのなごやかな雰囲気で良いでしょう。
一方、活動的なものが要求される職場では、袖の短い付下、小紋、紬などが汚れませんし、動きやすいものです。お正月だから必ず中振袖や訪問着でなければいけないということはありません。自分の個性に合った、一番美しくみせてくれるものを着ればいいと思います。
日本人なのですから、お正月ぐらいはきものを着て日頃活発なあなたも女らしく、奥ゆかしい一面を見せていただきたいものです。ただし、あくまでも神聖なる職場ですから、お化粧や髪飾りなどもけばけばしたものは避け、上品で控えめなものを用いることも大切です。

=お年始などよそのお宅を訪問した際、コートやショールはどこで脱いだら良いのでしょうか。また、お土産などはいつ出せば良いのでしょうか。
=よそのお宅を訪問する際は、ショールやコートは玄関先で脱ぎます。脱いだものは袖畳し、目立たないようにバッグと一緒に抱えてしまうと良いでしょう。
招待でない場合に、玄関に入る前にコートを脱ぐのは、家の中に通して下さいという催促になるので、玄関では着たままだという説もありますが、コートは道中のちりや汚れを運んできているので、着たまま挨拶というのは、たとえ玄関先で挨拶をして失礼する場合にしても、礼の無いように思われます。
挨拶の後、部屋に通される場合には、玄関先であづけるか、風呂敷などに包んでしまうと良いでしょう。手土産などは部屋に通され、挨拶がすんでから目だ立ぬように風呂敷から出して、先方に向けての畳の上か、洋間ならテーブルの上に置きます。

=成人式にきものを着たいのですがウールの絣しかもっていません・・・。
=成人式というのは、大人になったことを自他ともに認識し、大人として社会的にも責任を持った言動をとらなければならないということを記念する行事でもあります。昔でいえば元服にあたるもので、けじめの儀式ですから、格式のある家では第一礼装でいろいろな行事を行ったものです。
が、現代では成人式の形式も考え方も変わってきています。必ず礼装でなくても良いのですが、やはりこの日が何かあるごとに思い出されて、自覚を呼び起こすような印象深い装いをすることは大切だと思いますよ。
日本人である我々は、日本の長い歴史と伝統を持つきものを着ることが一番ふさわしいかと・・。ウールの絣しかない場合には、それを最高に生かして、個性的に装えばそれで良いのでは。

=18歳で結婚して来年成人式を迎えます。友達が中振袖を着ます。私も中振袖を着ても良いでしょうか。
=本来、振袖はお嬢さんが着るものです。結婚すれば着ないのが日本の習慣でした。最近では結婚1年ぐらいは時と場合によっては着る人もいます。タレントや女優さんなどは職業的なパーティではミセスも中振袖などを着ますし、外国などでは華やかな雰囲気を盛り上げるには効果的でもあります。
しかし、装うということは、自分らしく装うということが大切だと思います。娘は娘らしく、妻は妻らしく。これは何も世帯臭くなれということではありません。あえて反対はしませんが、友達と一緒に中振袖を着るよりも、訪問着や付下げの方が、かえって引き立つのでは、と思いますが。

成人式に初めてきものを作りたいのですが、どんなことに気をつけたら良いのでしょうか
=初めてきものを作る場合には、できるだけ応用のきくものを選ぶことです。成人式は1度だけです。その後、お正月、卒業式、友達の結婚披露宴など幅広く用いられるものが良いでしょう。
初めてのきもの姿には自信が持てないものです。あまり個性の強い色や柄は飽きがきます。柄は、できるだけ伝統的なものを選び、色は自分を一番引き立たせるものにしたら良いと思います。伝統的といっても古風なものという意味ではありません。あまり古風になりすぎると今時の建物に合わなくなります。
参考ですが、振袖として着用し、その後袖を切って訪問着にという形態もあります。